削る?削らない?その判断、何を基準にしていますか?

若手歯科医師向けの技術、キャリアのアドバイス


削るべきか、削らざるべきか。

歯科医師なら誰もが一度は悩んだことがあるテーマだと思います。
患者さんの歯は一度削れば元には戻りません。
だからこそ「削る判断」には責任が伴いますし、若手の先生ほど慎重になりがちです。

でも、慎重になりすぎて必要な処置を見逃してしまうことも、またリスク。
今回は僕が日々の臨床で意識している「削る・削らない」の判断基準についてお話します。

削らなかった結果、トラブルに…

かつて、僕が勤務医として働き始めた頃、ある患者さんのう蝕治療で「そこまで削らなくても大丈夫そう」と判断し、浅めで止めてCR充填をしたことがありました。
しかし、数ヶ月後にその患者さんが再来院。
「最近、噛むと違和感があるんです」と。
レントゲンを撮ると、残したカリエスが進行し、二次カリエスになっていました。

当時は「削ること=悪」と思っていた時期でしたが、この経験をきっかけに「削るべきときに、適切に削ることの大切さ」を強く学びました。

僕が切削判断で大切にしている「3つの要素」

現在、僕が「切削すべき」と判断する際に意識しているのは、次の3点です:
・患者さんに症状があること
・う窩が明確に認められること
・レントゲン上でエナメル質を越え、象牙質の1/3以上まで進行していること
この3つがすべて揃う必要はありません。

あくまで総合的に判断する材料として活用しています。
※なお「自覚症状がある=カリエス」とは限らず、知覚過敏や咬合性外傷、歯周炎など他の原因によることも多いです。
今回は「カリエス由来の症状がある場合」にフォーカスしてお話しています。

削らない方がいい症例もある

反対に、「黒く見えていても削らない」と判断するケースもあります。
・小窩裂溝に黒変があるが、う窩がなく進行性もない場合
・根面が黒く見えるが、実際は色素沈着で進行が認められない場合
こういったケースでは、無理に削ると修復物の脱離リスクが上がったり、辺縁部から二次カリエスになったりと、かえって予後が悪くなることもあります。

経過観察=未来への予防と安心

また、「削らない」と判断したC1レベルのカリエスでも、経過観察のために定期検診のアポイントを取ってもらうことが大切です。
これは患者さんの利益にもつながるし、医院にとっても再診患者のプールとして有効な戦略になります。
「削らないからこそ、しっかり見守る」という姿勢が、信頼にもつながります。

削る判断に必要なのは「技術」だけじゃない

大切なのは、一時的な安心感ではなく、長期的な安定を提供すること。

「削らなかったからよかった」ではなく、「今、削るべきだったかもしれない」と数年後に思わないように。
切削の判断には、知識・経験・倫理観すべてが問われます。
迷ったときは、「この治療がこの患者さんにとって最後の治療になるか?」という視点を、僕は大切にしています

次回の投稿では、「歯を失う原因No.1は虫歯じゃない!?」というテーマで、実はもっと怖い歯周病についてお話しします。

患者さんが見落としがちな歯周病のリスクと、毎日の生活習慣・セルフケアの大切さについて、わかりやすく解説していきます。

ぜひ次回もご覧ください。

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